マグロについて知りたい

~豆知識・レシピ・統計~

マグロ豆知識

マグロは、分類学上は硬骨魚綱スズキ目サバ亜目サバ科マグロ属の総称です。属名は、Thunnusで、ラテン語ですが、ギリシャ語の「突進」の意が由来です。英名のTunaも属名から来ています。万葉集には「鮪」という文字が出てきますが、当時は「シビ」又は「ハツ」と呼ばれていました。武士の世である鎌倉時代になると「シビ」が「死日」に通じるとして嫌われました。「マグロ」という言葉は、江戸時代中頃になって初めて文献に登場します。関東の方言で「目黒」、つまり目が黒いからマグロだという説や、背中が黒いことから「まっくろ」が転じて「マグロ」になったという説もあります。(斎藤健次氏の監修文を「マグロの科学:中野秀樹編著」に基づき再構成)

国際的にはえ縄漁業で利用されているのは以下の6種類です。(水産研究・教育機構「令和3年度国際漁業資源の現況」より抜粋)

太平洋クロマグロ

太平洋クロマグロ

大型魚は寿司や刺身用の高級食材として利用され、0~1 歳の若齢魚は 「めじ」や「よこわ」等と呼ばれ、主に刺身用食材として流通 している他、養殖用種苗として利用されている。

大西洋クロマグロ

大西洋クロマグロ

大西洋及び地中海に生息し、東西2つの系群が存在する。地中海で漁獲されるものの殆どは蓄養に回される。

ミナミマグロ

ミナミマグロ

豪州、NZ、南アフリカ沖の低水温の海域で獲れる。脂が乗っていることから高級マグロとして寿司屋、料亭で良く使われている。インドマグロとも呼ばれる。

メバチ

メバチ

赤道をはさんで南北の緯度約35度にわたる広い範囲で獲れる。漁獲量の一番多いマグロで目玉が大きくぱっちりしていることから目鉢マグロと呼ばれている。

キハダ

キハダ

メバチマグロとほぼ同じ漁場で獲れる。体型がスマートなのが特徴で、赤身のあっさりした味わいが楽しめる。肌が黄色いことから黄肌マグロと呼ばれている。

ビンナガ

ビンナガ

世界中の海に広く分布し、大回遊する小型のマグロ。長い刀状の胸びれが特徴で油漬の缶詰の原料になるが、最近では刺身でも食べられている。

クロマグロは、生まれた時の体長はわずか3mmにも満たない大きさですが、1年後には60cm前後に成長し、10年後には2mを超えるものと推定されます。(国際水産資源研究所のホームページより)
マグロ体長推移グラフ

クロマグロのことです。大西洋クロマグロと太平洋クロマグロの2種があり、マグロの中で一番大型で、現在のところ刺身や寿司の市場で最高級に位置します。北西大西洋のカナダのノバスコシア沖で全長304cm、体重679kgが漁獲されたという記録もあります。

クロマグロとミナミマグロは成長するにつれて大回遊するようになりますが、基本的にクロマグロは北半球、ミナミマグロは南半球に生息しています。キハダとメバチはともに同じ海域に分布していますが、キハダは表層付近、メバチは中層付近と垂直に棲み分けています。ビンナガは、赤道を越える回遊はせず、北半球と南半球の集団はそれぞれ独立しています。
マグロの回遊

大西洋クロマグロについては最高速度が54kmに達するという文献があります(The muscle twitch and the maximum swimming speed of giant bluefin tuna, Thunnus thynnus L. - Wardle - 1989 - Journal of Fish Biology - Wiley Online Library)。
また、竿釣りにかかった直後のキハダマグロの最高速度は75kmに達するとの文献があります(Measurements of Swimming Speeds of Yellowfin Tuna and Wahoo [calpoly.edu])。

魚は鰓呼吸で自ら酸素を吸収していますが、マグロは口と鰓蓋を開け閉めして呼吸する鰓ポンプ呼吸ができないので、泳いで口中に新鮮な水を流し続ける必要があります。従って、常に泳いでいないと呼吸ができずに死んでしまいます。カジキも同じです。

文化・文政(1817年の前後)の頃、目の前でサッと握ってパッと食べる江戸前握り寿司が始まったと言われています。この寿司種に使われ評判となったのが、「ヅケ」(鮮度落ちを防止するため醤油に漬け込んだもの)です。これが、マグロを刺身で食べる習慣につながったと言われています。この「ヅケ」は赤身でした。「トロ」を食べ始めたのは昭和の初めで、それまでは市場ではトロのことを「ネコまたぎ」と呼んでいたそうです。今でも、通は「赤身」の方を刺身の本領として好んで食すると言われています。(監修:斎藤健次氏)

トロは内臓を包んだ腹節を指し、頭側に行くほど(カマトロ、脳天)脂が強くなります。クロマグロは腹部のトロと赤身に二分されますが、ミナミマグロは全身に脂が行きわたり、背のほうまでトロがとれます。メバチは食感が軟らかく脂は少な目で程よい甘さがあります。(監修:斎藤健次氏)
マグロの部位

昔は、トロの脂っぽさが日本人の舌になかなか馴染まず、トロの人気が本格的に高まり始めたのは東京オリンピック後の昭和40年頃からです。当時、鯨カツの給食など子供の頃から脂っこい食事に慣れた世代が大人になり、洋風の食事が定着しました。淡白な味に慣らされていた舌がトロの脂っぽさを旨さと感じるようになったからです。インスタントラーメンが急速に一般化していったのもこの時期で、トロとインスタントラーメンという両極端に位置するような二つの食べ物が、同じ追い風を受けて人気を高めていったことになります。(監修:斎藤健次氏)

釣ったマグロは、まず鰓、内臓、尾部を取り除く(これをマルという)段階で84%、水揚げされ、次に頭とカマを切り落とし(ドレス)、背と腹、さらに左右に分割(ロイン)し、骨、皮、血合を除くと46%になってしまいます。このため100キロのマグロでも食べられる身の部分は46キロとなり、刺身としてサクや切身でパックされるのは37キロ、残りは「ブツ」や「すき身」となります。その中でトロの部分は約8~10キロくらいです。(監修:斎藤健次氏)

脂質がマグロの味の特徴の一つです。食品成分表(八訂)では、天然クロマグロの赤身が1.4%、脂身では27.5%となっていますが、冬場になると赤身では10%、脂身では40%にも達するということです。しかし不飽和脂肪酸が多いので、なめらかでくどさがありません。赤身にはイノシン酸、アラニン、タウリンが多く、旨味とコクを与えています。また、結合組織が少なく身が柔らかいのもマグロの美味しさの一因です。(監修:斎藤健次氏、データは最新のもの)

マグロの赤身100グラム中のたんぱく質の量は、鶏肉、豚肉、牛肉より多く、ナトリウムを体外へ排出する働きで高血圧対策に効果的なカリウムも鶏肉、豚肉、牛肉より多く含んでいます。またトロは、豚肉や牛肉には含まれないビタミンD(カルシウム吸収を助け骨粗しょう症対策に効果的)や不飽和脂肪酸(DHA・EPA:血液サラサラで生活習慣病予防に効果的)を豊富に含んでいます。

3枚におろしたうちの中骨の骨と骨の間についている赤身の部分をいいます。貝殻等でひいて身をとります。100kgのマグロからとれる量は1.5kgです。中おちが少ないほど、さばき方が上手であると言われます。

主としてまき網で漁獲した若令魚や瘦せたマグロを生け簀に移し、餌を与えて脂肪をつけることです。現在、地中海沿岸やアドリア海で大西洋クロマグロの蓄養、メキシコや日本で太平洋クロマグロの蓄養、豪州でミナミマグロの蓄養がそれぞれ行われています。地中海では定置網で漁獲したもの、日本では曳き縄漁法で漁獲したものも生け簀に入れています。

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