マグロの持続的利用について 活動 3

日本に輸入されるマグロの生産実態を調査し、FOC漁船とIUU漁業の廃絶に努めています。

FOC漁船とは、地域漁業管理機関(RFMO)の非加盟国に船籍を移して、RFMOの保存管理措置を無視して操業する便宜置籍漁船のことです。また、IUU漁業とは、違法・無報告・無規制な漁業のことです。
これらの漁船や漁業を野放しにすればマグロ資源の持続的利用に悪影響を及ぼすため、FOC漁船をスクラップ又は正常化(RFMO加盟国へ転籍)させる必要があり、OPRTは元々スクラップ事業のために設立されました。
現在、RFMOでは、漁船のポジティブリスト制度(各RFMOへ正規に登録された漁船のリスト)及びIUUリスト(IUU漁業を行った漁船のリスト)を導入しています。クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、メカジキについてはポジティブリストに掲載されていない漁船の漁獲物の輸入を禁止し、IUUリストに掲載された漁船の獲ったマグロ類については輸入、陸揚げ、転載等を禁止しています。OPRTに登録された漁船は全てポジティブリストに掲載されています。
また、日本は世界最大の刺身マグロ市場ですが、日本に輸入される刺身用マグロの種が申告どおりであることを確認するために、OPRTは、水産庁の委託事業を受け、関係機関と協力しながら、輸入マグロのDNA検査を行っています。

ポジティブリストについて

各RFMOに公式に登録され、マグロ漁業に関する国際ルールに違反していないことが確認されている漁船のリストです。日本語では「正規許可船リスト」と呼ばれています。正規許可船リストには漁船だけでなく、マグロ類の運搬船も含まれます。また、RFMOによってはマグロの蓄養場についても正規リストを作成しています。

マグロ類を対象として操業する漁船は、RFMOのルールに従って操業する必要があります。しかし1990年代後半、そのルールを逃れようと、RFMO非加盟国に船籍を移す便宜置籍(FOC)漁船による違法・無規制・無報告(IUU)漁船が横行しました。そうした船を無くしていこうとする取り組みの中で生まれました。

2001年6月国連食糧農業機関(FAO)で採択されたIUU漁業の防止、抑止、廃絶のための国際行動計画に基づくIUU漁船対策として、最初は、IUU船など、ルールを守らない船のリストを作ろうという作業が行われました。そうした船のリストは「ブラックリスト」とか「ネガティブリスト」と呼ばれていました。しかし、それらの船は、取り締まろうとすると船籍を移し、船名を変え、その実態を完全に捉え切れませんでした。そこで、逆に、ルールを守っている船のリストを作り、リストにない漁船の漁業活動を規制するような取り組みができないかという発想から、「ポジティブリスト」が生まれました。2002年11月のICCAT(大西洋マグロ類保存国際委員会)でこの対策が最初に決定され、他のRFMOにも広がっていきました。 2004年に創設されたWCPFC(中西部太平洋マグロ類委員会)を最後に、現在では5つの全てのマグロ類RFMOで実施されています。

RFMO加盟国は自国のマグロ漁船で国際的なルールを守っているまたは守ると認めた船をRFMOに登録します。対象となる船はマグロ類を対象として操業する船です(ICCAT、 IATTC(全米熱帯マグロ類委員会)、 IOTC(インド洋マグロ類委員会)、 CCSBT(みなみまぐろ保存委員会)の場合、船の長さが24メートル以上(ICCATは2009年に20メートル以上に変更))。加盟国は、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ及びメカジキについてポジティブリストにない漁船の操業、転載、入港、陸揚げ、漁獲物の輸入を禁止します。

ポジティブリストに掲載されていない漁船については、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ及びメカジキが対象になります。これとは別に作成されているIUU漁船リストに掲載された漁船の漁獲物については全てのマグロ類が輸入禁止の対象になります。

それぞれの海域のRFMO加盟国は実施することになっています。日本の他、EUでは2010年1月からIUU漁業規則(EU's IUU Regulation (1005 / 2008))によりポジティブリストにない船の入港や陸揚げを規制しています。また、米国では2018年1月から「食用海産物輸入モニタリングプログラム」(U.S Seafood Import Monitoring Program : SIMP)により、漁獲から流通までの記録を確認できるようにしています。

蓄養マグロは、1990年代初めにオーストラリアのミナミマグロで始まり、その後数年で地中海のクロマグロ蓄養が急拡大しその供給量を増やしました。そうしたなか種苗魚の漁獲量等その実態がわかりにくくなっていたことに加え、RFMOの枠組み外での蓄養事業が拡大していることが発覚しました。世界的にマグロ資源を管理し持続して利用しようとしている中で、資源管理の効果を減殺しかねないそうした蓄養マグロの実態を把握し、不透明な資源の利用を抑制するため、ICCATで2004年からマグロの蓄養場の登録制度が導入され、その後CCSBTでも2009年から始まりました。登録された蓄養場で生産されたマグロのみが国際取引の対象となります。

多くのマグロ類で科学的根拠に基づく総漁獲可能量(TAC)及び国別割当量が導入されています。また、対象船の漁業活動の透明化(含むRFMO間、旗国間、船主間移動等)のため、漁船の固有識別情報(IMO番号)の登録が義務付けられています。その他、定期漁獲報告、漁船位置監視装置(VMS)の漁船への設置、はえ縄漁船の洋上転載監視制度(運搬船へのオブザーバー乗船)、寄港国による漁船・運搬船の検査等が実施されています。また、WCPFCでは、加盟国の取締船が公海上で他国の漁船を臨検できる国際乗船臨検制度が導入されています。