ミクロネシア連邦のポンペイ(ポナペとも言う)にある中西部太平洋マグロ類管理委員会(WCPFC)の事務局で、短期間の仕事を始めて今年は2年目になる。今年は、去年よりやや長めで、5月から8月いっぱいまで、日本のトラストファンドの世話と北委員会(NC)とWCPFC事務局との連絡係を兼ねて滞在予定である。今回は少し現地の様子も織り交ぜて、報告したいと思う。 ミクロネシアへ来たなと実感するのが雨である。年間に5000ミリの雨が降り(毎日15ミリの雨が降る計算になる)、視界が消えるほどの豪雨と強烈な太陽の日差しが一日に何度となく繰り返される。しかし、海洋性気候のせいもあり、気温は25−32度ほどで、日中は暑いが、明け方には少し肌寒くなる。海岸はすべてマングローブが覆っていて、砂浜はほとんどない。山には島中鬱蒼(うっそう)たる熱帯雨林がびっしりと繁茂し、至る所に小さな滝や川がある。ポンペイ島は淡路島より少し小さな島で、島全体で3万人くらいの人が住んでいる。ポンペイの町には信号機がなく、メーンストリートは15分も歩くと終わりになる小さな町だが、ミクロネシアではいちばん大きい。この小さくて、しかも交通が極めて不便な町に、関係国の政治的駆け引きの末、世界最大のマグロ漁業資源を管理するWCPFC事務局が設置されたわけである。今回は、昨年報告した新事務局の広々として申し分ない環境のもとで仕事を始めたので、続報を紹介したい。 有力な産業のないこの国で、外国が払うマグロ漁業の入漁料は米国からの資金援助に次ぐ大きな収入として、極めて重要である。一方、現地の人々は、島周りに豊富にいるカツオやキハダを小船で獲り、マグロ類は自給自足ができている。豊富なサンゴ礁の魚類やマングローブガニとともに、マグロ類は好きなようで、日本統治時代の名残か、刺身で食べることが多いそうである。中西部太平洋(西経150度以西の太平洋)のマグロ類の漁獲が200万トンを超えるまでに増加した。ところが、これはほとんどが域外国の巻網船によるカツオとキハダの漁獲によるものである。この広大な海域にある数多くの島国のマグロ漁獲量は、域外国の漁獲と比べてとても少なく、全体の1割そこそこしかないであろう。ミクロネシアでも近代的な大型巻網や延縄漁業があるが、年間の生産は3万トン(ほとんどが巻網船の漁獲)ほどで、漁獲物は全部外国へ輸出している。魚市場はなく、小さな魚屋に漁師が直接漁獲物を持ち込んで売っている。サンゴ礁の魚は朝、カツオやキハダは夕方に水揚げされるので、一日に2回魚を買いに出かけることもある。早朝には、ハタの類やイセエビなどは生きているのを買うことができる。(つづく) |
![]() マングローブ林
マングローブの木がどれほど大きいかは、この写真に写っている人間の大きさと比べれば分かると思う。マングローブの木は硬くて、丈夫なので、いろいろな用途で建材に利用されるようで、現地の人たちには貴重な木である。 |