OPRT社団法人責任あるまぐろ漁業推進機構

第5回 「小型マグロの巻網による混獲回避技術の開発を急げ(下)」

 さて、このように書いてくると、FADsなどの流れ物につくこれら3種の小型魚の漁獲を避ける方法は、禁漁区禁漁期を設ける以外ありそうにないように思われる。しかしながら、ほとんどの巻網船は高性能の魚群探知機を装備しており、船頭は色や形などによって、魚種ばかりでなく魚の大きさまで言い当てることができると言われている。私も巻網船に乗船した際、船頭がこれはカツオ、これはメバチなどと、ソナーの映像を指しながら説明してくれたことを覚えてる。私が乗船したときは20年も前のことだから、今は格段に探知機の性能もよくなっているはずである。最近、これらの電子映像を詳細に分析し、魚種や大きさなどの識別が可能かどうかを研究する動きがWCPFCでやっと出てきた。
もし、魚群探知機の映像分析で有益な情報が得られるという結論が出れば、少なくとも、漁獲以前にどれだけのメバチやキハダが混じっているのかが分かり、一律に禁漁期禁漁区を設けなくてもよくなる可能性がある。さらに、これらの3種の小型マグロ類の同時追跡により、詳細に見ていくと遊泳水深にかなりの違いがみられるのではないかという情報もある。
 もし、ある時間帯に種による遊泳水深の違いがあれば、網の操作や改良で、特定の深度にいるマグロだけを漁獲することが可能となろう。魚を漁獲することと避けることとは表裏の関係にある。したがって、これだけの技術革新で中西部熱帯域における巻網操業を可能にした実績があるのだから、魚種の取り分けや小型魚を避ける方法ももっと真剣に取り組めば出来るはずであると私は思うのである。
 東部太平洋ではイルカにつくキハダを巻網で漁獲する際、多くのイルカが網に絡まって溺死することが、以前は大きな問題であった。しかし今日では、漁具や操業の改善で、イルカの死亡はほとんどなくなった。このイルカ巻漁法におけるイルカの死亡率の大幅な削減は、死亡率削減に向けた研究が始まった当初は、だれもできるとは思わなかったのではないか。それを知恵を出し合って実現したのだ。これにならって、日本は率先して小型魚の混獲回避や選択的混獲回避の研究を始めるべきである。