OPRT社団法人責任あるまぐろ漁業推進機構

第6回 「ナポレオンフィッシュを食べる」

 ナポレオンフィシュ(以降、ナポと略)という魚を知っていますか?水族館なんかで人気の熱帯魚で、見た人もいるかもしれない。名前の由来は、年をとるにつれて、おでこがせり出してきて、ナポレオンがかぶっていた帽子のように見えるので、そう名がついたようだ。日本名はメガネモチノウオといい、こちらは、目のところに、眼鏡のつるのような縞(しま)模様があることからきていると書いてある。この魚はベラの類(たぐい)だが、2メートル、200キロに達する巨大魚だ。サンゴ礁の浅いところまで来るので、こちらの漁師がモリで突いてくる。市場で見かけるのは、5キロぐらいの小さいのが多い。

 先日、大家が「ナポのいいのを手に入れたから、お前にやる。すごくうまいよ!」と興奮気味に伝えてきました。もらったのは、すでに切り身になっていたが、10−20キロほどの市場で売っているものより大きいサイズ。皮がおいしそうで、ウロコはとってあったが、皮付きだ。白身のきれいな身をしており、早速、刺身、煮物、蒸し物などにして試してみた。おいしいが、刺身は大味、熱を加えると硬くなりすぎ、ハタやフエフキダイよりは味は落ちる。でも地元では、人気の高い魚で、時には数百匹が群れになって泳いでいるのを見るようだ。

 何とかもっとおいしく食べる方法はないものかと思案して、思いついたのが、硬すぎる(あるいはシコシコしするぎる)のを軟らかくする方法。これには、裏から青パパイヤをもいできてすり下ろし、切身に混ぜて軟らかくする。パパイヤのタンパク分解酵素は青いものにしかなく、熟れて黄色くなった食べごろのパパイヤにはほとんど含まれていないとのこと。こうして軟らかくした切身をカレー風味のムニエルにしたあと、香味野菜と混ぜて、マリネにすると、とてもいい感じになる。

 一方、硬さを生かす方法もあり、熱を加えると、ほとんど鶏肉くらいの弾力が出るので、焼き鳥風にするといける。皮付きで、本当に焼き鳥によく似たものができる。

 この魚の小さいのはたいそう軟らかくて中華料理では珍重され、香港などでは大変な高値がつく。そのせいで、乱獲されて、ワシントン条約で商取引が規制されている。また、冥(めい)土の土産が一つ増えた。(おわり)


ナポレオンフィッシュ幼魚は眼鏡のつるのような船線が見える。

成魚はおでこが張り出す。