OPRT社団法人責任あるまぐろ漁業推進機構

第2回 「産業乏しくマグロが頼り ミクロネシア連邦の悩み」

 WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の事務局があるFSM(ミクロネシア連邦)は、人口10万人、一人当たりGNPが2500ドル(2007年現在)で、南太平洋の島国の中でも大国の一つ。日本との関係も深い。しかし、発展途上国が抱える共通の問題をFSMも抱えている。FSMから日本のマグロ漁船の主漁場・中西部 太平洋の島国の実情もみえてくる。以下雑感を交えて、取りまとめてみた。

 長い間の外国の支配が終わると、さしたる産業がないままに、もとの原始的な自給自足生活には、もはや戻れなくて、現代の経済社会の中でいや応なしに生きていかなければならない。FSMの歴史では、有名なナンマドール遺跡〈1000年ほど前に造られたと考えられている〉に示されるように、数千年前に、アジアから ポリネシアへの移動の際に原住民が住み着き、西欧人との遭遇がそれに続く。

 ポルトガル人がYap島(1525年)に来て、その後スペインによる300年に渡る長い統治の後、ドイツが約30年、ついで日本が約30年、そしてアメリカが現在まで65年間、強い影響力を維持している。

 1979年のFSM独立まで、500年に渡る外国支配は、それぞれの支配者の意図で、軍事、キリスト教普及、あるいはリン鉱石やココナツ〈コプラ〉、カツオ節等の生産・貿易を目的とし、支配者の例にもれず、地元のFSMのことなどは全くお構いなしで、搾取・抑圧の連続であったと歴史書にある。戦後は米国がFSMのため に、コンパクトと呼ばれる援助金をつぎ込んできたが、さしたる産業のないこの島国では、経済状態は常に赤字で、一向に改善しない。このようなFSMの抱える問題を克服することはだれが見ても大変困難であろう。コンパクト援助金が、FSMの最大の産業と悪口を言われる公務員の給料支払いで大方消えて、インフラの整備や一般人の雇用にまで回りきらないようである。

 さて、水産の話になると、FSMでも、多くの島嶼(しょ)国と同じく、外国マグロ船からの入漁料が、米国のコンパクト援助を除くと最大の国家収入である。このほかに自国(といっても、外国資本ではあるが)のマグロ延縄漁業や巻網漁業も小規模なものがあり、外国にマグロを輸出している。島の周りで豊富に取れる魚類は島民の重要なタンパク資源であり、漁業者も多い。となると、漁業あるいは関連産業はこの国の将来発展にとって欠くことのできない唯一と言っていい産業であろう。

 外国マグロ船の入漁料収入の確保・増加はもちろん大事であるが、自国の零細漁業の育成・管理も重要である。それを目指して、前者については、マグロ合弁事業促進などによるいわゆる外国漁船の“現地化”の動きが加速しており、資源管理をめぐる問題に新たな要素が加わり始めている。

 FSMでも、合弁化や漁獲物の転載基地機能の促進を図るであろうし、将来は缶詰工場やカツオ節工場を造るような話が具体化するかもしれない。また、2年後には滑走路の延長工事が完成し、日本との間に直行便を飛ばす事ができるようになるので、マグロ類の日本への空輸ビジネスが拡大するだろう。

 FSMの零細漁業については、リーフ内で獲れる魚やそのすぐ外で獲れるカツオ、キハダが毎日水揚げされている。漁獲量は漁師が増えたのに減少気味であると言われているが、統計の不備ではっきりとしない。統計がなければ五里霧中のまま、やみくもに計画を進めることになり困るということで、今年はとりあえ ず、カツオ・マグロ類に関する統計の収集の調査がWCPFCに提供した日本の基金によりポンペイ州で始まった。

 リーフ内の魚は、夜間に動きのない魚をねらって懐中電灯を使ってモリで突く漁業で漁獲されている。小型魚の割合が増えてきた、規制が守られていない、夜間漁業を規制すべきだ、乱獲になっているのではないかなどの懸念もある。チューク州では、ダイナマイト漁法が問題となっている。

 漁業に関してFSMのみならず、南方の島国に共通している悩みの解決に対して、日本の支援を期待する現地関係者の声も高い。(つづく)

ポンペイの象徴であるソケーズロック。
リーフの内外では、多種多様な魚が豊富に漁獲され地元で販売される。