世界のマグロ関連の条約の中で、その管轄海域からのマグロ類の漁獲量が最も大きいのが、WCPFCであり、05年の統計によると、全世界からのマグロ類の年間総生産約430万トンの約半分の210万トンの生産を挙げている。 この海域はほぼ西経150度以西の太平洋の全域をカバーし、日本のEEZに隣接する海域でもあることから、伝統的にこの海域でマグロ漁業を行ってきた日本にとってはとりわけ重要である。この海域に国際的なマグロ管理機構が設立されたのは、最近のことで、まだ5年も経っていない、世界で最後にできた新しい条約機構である。 実はこの海域にマグロ管理機構をつくろうという話は、私が研究所に入所したころから、つまり、今から40年も前からあったのである。この広大で複雑な漁業を抱える海域に関連する国々の合意を得られる条約をつくることは、並み大抵なことではないことを物語っている。 また、この海域には南太平洋の島国が中心になって、マグロ漁業資源の管理に関する彼らの利益を確保する目的で構築したFFA(フォーラム漁業機関)という、強力な国際機関がある。FFAはかつてこの海域で、条約が出来る前は最強の遠洋漁業団体であった米国のマグロ巻網船協会と入漁料協定を締結して以来、この海域の漁業管理に関して、遠洋漁業国に対して大変大きな影響力を持っている。 WCPFCの事務局がミクロネシア連邦に設置されたことには、FFAなど南太平洋諸国の意向によるところが大きい。発展途上国が団結して、このような大きな勢力を持っているのは、世界でこの海域のみである。さらに、最近、隣接する東部太平洋やインド洋などからも、魅力的なこの海域に漁船が進出するようになってきた。つまり、世界にとっても、日本にとっても最重要海域のまぐろ資源を管理しているのが、WCPFCということになる。 さて、このWCPFCの事務局に3か月ほど滞在する機会があり、いろいろな経験をさせてもらったので、WCPFCや事務局について簡単な紹介をしたい。ちなみに、ミクロネシアの事務局滞在中の私の仕事は、日本がWCPFCに提供することとなった信託資金(JTF)の管理をすることと、WCPFCの下部組織で北緯20度以北の北太平洋の資源管理に中心的な役割をする北委員会(NC)とWCPFC事務局との連絡を緊密化することである。 |