私が40年近くマグロ資源の研究をしてきた中で、この10年くらいの間のマグロ類の回遊についての知見の増加は、間違いなく第一に特筆されるべき研究成果といえる。「記録型標識」の開発が、研究を飛躍的に進めた。ICを利用した小型の電子標識の開発の結果だが、最新式のものは、標識をマグロから切り離す時刻を放流時に予め設定することができ、決められた時刻に自動的に魚体から切り離されて、海面に浮上し、浮上した標識から記録情報が発信され、人工衛星を経由して、位置や遊泳水深等の詳細な情報が得られるのだ。標識を打ったマグロを、再度捕獲しなくても情報をとることができる。この標識が出来れば、ノーベル賞ものと言われた大発明である。標識が高価で衛星回線の使用量を含めて、1本100万円位するし、装着器具の開発も、まだまだである。ほぼ1年以内に、魚から脱落するという問題もあり、改良の余地はあるが、研究者や漁業者が長年解からなかった回遊の実態が次々と明らかにされている。いくつかの興味ある新知見を紹介しよう。 |