本年3月末にR.Myers(カナダのダルハウジー大学教授)が死去した。2003年にNature にマグロ資源の全般的激減を指摘する論文を発表して以来、色々と世間の注目を浴びた人であった。私は一度も会ったことはないが(だいぶ前カナダでICCATの資源評価の会議があったときに出席していたようであるが、全く記憶に無い)、2003年の論文発表前に、この論文のことで、メールで押し問答を繰り返し、発表を止めるように要求したことがある。発端は、この論文に日本の延縄のデータを使わせてくれと彼から依頼があり、事前に見せて、チェックするという条件つきでOKしたことがあったが、彼から連絡はなく、とっくに忘れていた。その後、知り合いから今度Myers が論文を出すようだ、内容は少し刺激的のようだなどとの情報が入ったので、『すでにNatureで受理されているようだがなぜ事前に見せない、ひどいじゃないか』とメールし、やり取りが繰り返された。J.Hampton やJ.Sibert 等のマグロ資源学者も巻き込んでのやり取りとなったが、人の意見を全く聞き入れない。Nature はどういう基準でMyers の論文を受理したのか理解に苦しんだが、あっという間に公表となってしまった。その後、予想したとおり、いくつかの反論論文により、彼の論文は世界のマグロ研究者の間では、全面的に否定されている。私も、2006年の国連の会議で、Myers 論文の共著者のB.Worms にこの論文について反論したことがある。 Myers 一派の漁業批判は今も続いており、全く衰える気配は無い。その背後に過激な反漁業団体が控えていることは良く知られており、潤沢な資金を駆使して、漁業、特に大規模漁業を批判し続けている。表面的にはこれが、一連の動きの原動力となっていることに間違いは無い。 |