本年3月に行われた中西部太平洋まぐろ委員会(WCPFC)年次会議にオブザーバーとして参加したが、率直に言ってWCPFCの管理能力が問われる極めて残念な失敗会議であったと言わざるをえない。失敗の原因は、遠洋漁業国と島しょ国との対立がますます先鋭化してきたことにある。
WCPFCでは、他の地域マグロ管理委員会と異なり、島しょ国の200海里経済水域(EEZ)内に大半のマグロ漁場があり、島しょ国で構成するFFA(南太平洋漁業機関)やPNA(ナウル協定加盟国連合)という強力な組織がある。
これらの組織はWCPFCとは別に巻き網の操業日数やFADの規制等を決定し、島しょ国の利益の確保を図っている。
また、巻き網のさらなる規制強化に関しては、遠洋漁業国が勝手にやるのならいいが、自分たちはいかなる規制強化も受け入れない、と強く反対している。更に、マグロ資源は島しょ国の私的財産であり、この管理について先進国にとやかく言われることはないとか、国際法を盾にとるのは、控えるようにとか、主張が先鋭化してきている。(ここで注意したいのは、島しょ国のEEZの中で操業している巻き網のほぼすべては遠洋漁業国の巻き網船だということだ。
いかなる規制も受けないと主張することで、島しょ国と遠洋漁業国の間でWCPFCの規制を回避し、実は互いの利益は確保するという構図があるようだ。例えば、外国船でも島しょ国の貢献に寄与率が高い船や島しょ国との個別の協定のあるアメリカの巻き網船の操業を別扱いしているし、操業日の定義もかなり曖昧のようで、島しょ国の巻き網操業日数の管理は、不透明だ。)
遠洋漁業国は、島しょ国にいろいろな形で援助を行い、操業の継続を図ってきた。しかし、根本的には、できるだけ多くの漁獲を上げたい遠洋漁業国とできるだけ多くの金を遠洋国から得たい島しょ国が、資源保存は大事だと公言はしつつも、対立している状態から抜け出せないでいる。今回のWCPFCの会議でそれが鮮明になったと言えよう。本年一年間の暫定規制では、巻き網の操業日数の基準年が、これまでの2004年レベルから2010年レベルに変更され、実質的に20−30%の漁獲努力量の増加となった。これでは、メバチ資源のさらなる悪化は避けられまい。また、これは、国際的に早急に取り組むことになっている過剰漁獲能力の削減に逆行する動きだ。これ以上の資源状態の悪化は避けなければならないことを肝に銘じて、自己の利益にのみ固執することをやめ、科学委員会の勧告を尊重し、資源状況に対応した適切な漁業管理に真剣に取り組まなければ、元も子もないことになるだろう。
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