メバチの資源状態の改善が思わしくない。この主たる原因は、巻き網によるメバチの漁獲が減少しないことにある。メバチ資源の状態を改善するために、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が巻き網のFAD(集魚のための人工浮き魚礁)操業の規制と延縄の漁獲量削減を中心とする漁業規制を開始したのは、2009年からだ。
FAD操業禁止は規制導入初年の2009年は2カ月、2010−2011には3カ月に延長されることになっているが、FAD禁漁期間外の巻き網によるメバチ漁獲が規制導入前のレベルと同じで、全く規制の効果が上がらない。メバチの巻網規制は、FADの期間禁漁または漁獲量削減規制のいずれかを加盟国は選択できる。日本とフィリピン以外は、FADの期間禁漁を選択した。日本は、巻き網で混獲されるメバチ未成魚の漁獲量をきちんと把握できる標本調査システムがあるので、確実に漁獲量を削減できる3割漁獲量削減を採用している。ただし、2011年からは、巻き網規制はどの国も3か月間のFAD禁漁に足並みをそろえている。一方、延縄は、3年かけて、漁獲量を段階的に3割減少させるというもので、こちらは、少なくとも規制を順守している。
日本は、巻き網も延縄も決められた漁獲規制に従っているのだが、日本以外の国々の巻き網漁業によるFAD規制がもくろみ通りの効果を上げなかったということである。FAD操業は、漁獲効率が高いし、効率は年々上昇してくる。数か月禁漁にしても、禁漁期間外では、メバチの漁獲に制限はない。小型魚の漁獲削減ができないので、大型魚を獲る延縄漁業は規制を守っていても、何の利益も受けないし、ますます漁獲枠が減少し、一人でわりを食っている状態にある。FAD操業では、カツオが主たる漁獲目的であるが、同時に漁獲される未成魚のメバチと未成魚のキハダを漁獲してしまう。現在まで何とかカツオの漁獲を落とさずにこれら2種の未成魚の漁獲を減らす方法が模索されてきたが、有効な方法は一向に見つからない。一部の巻き網業界では、FADの規制強化を見越して、ヘリコプターを搭載して、素群れの発見率を上げる動きもあるようだ。将来的には素群れ操業の漁獲成功率を高める方向に向うのが本筋であると思われ、FADの全面禁漁を含む禁漁期間の大幅延長は今後WCPFCでの論議の中心となるのではないかと思う。ここで忘れてはならないのは、過剰漁獲能力、特に、巻き網の過剰漁獲能力がこの問題の背後にあることだ。巻き網の潜在的な漁獲能力は、現在の漁獲量を大幅に超過するのであるが、その削減の必要が真剣に論議されているのに、巻き網の漁獲努力量は逆に増加している。去年のWCPFC本会議で、日本が提案した巻き網の漁船数の凍結は、総論として賛同する意見がかなりあったが、実行面での問題が多く提起され、時間切れで採択には至らず残念である。この過剰漁獲能力問題の解決が根本的に重要であり、FADの規制強化はそれから派生する問題ととらえることもできる。
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