OPRT社団法人責任あるまぐろ漁業推進機構

第14回 資源変動60年周期説−マグロの場合は?

 最近ロシアの研究者が、世界中のイワシ、サケ、タラ、ニシン等の資源変動を調べ、いずれの魚種にも、ほぼ60年毎に資源増減の周期がある事を発表している。元東北大学の川崎先生の研究ですでにイワシ類の資源変動に周期性のあることは知られているが、このロシアの研究のすごいところは、大規模な気候変動とイワシの資源変動を、過去数千年にわたって対比させ、両者の変動傾向がほぼ正確に同調しているという現象を示している事である。そんな大昔からの気候観測や漁業のデータはないのに、どうして数千年も昔からの大規模気候変動とイワシの資源変動が解るのであろうか?
 もちろん直接のデータは無いが、気候変動の指標は、1500年にわたって堆積しているグリーンランドの氷の層や、カリフォルニアのシエラネバダ山系に生育し、樹齢8000年にも達すると言われる松の年輪等の分析結果によって、また、いわしの資源量変動は、同じくカリフォルニア沖の無酸素層に分解される事なく2000年近くにわたって、堆積している鱗の量を分析することによって、その相関を明らかにしている。60年周期は、地球の表層気温の上昇期と下降期に対応しており、魚種によって、上昇期に資源量が増大するものと、その逆の傾向を示すグループがあり、さらにこの現象には、漁業 の影響よりは自然変動が大きいと指摘している。

<マグロの周期は?>
 残念ながら、このロシアの研究は、まぐろ類については言及していないが、地中海のクロマグロについて、数百年の定置網の漁獲量データを分析し、120年の周期があると言うフランスの科学者の研究結果がある。この論文では、資源の増大期と水温の下降期に相関があることをも示している。
もっと詳しく分析すると、60年周期も出てくるかもしれない。ちなみに、日本の遠洋水産研究所でも、太平洋のクロマグロの長期にわたる漁獲量の大変動について研究を開始したところである。
120年周期が存在するならば、現在は、地中海のクロマグロ資源は増大期にあたるように思える。地中海では、クロマグロの資源減少が大問題になっているが、ともあれ、3万トンものクロマグロの漁獲を曲がりなりにも支えているのは、もしかしたらこの周期性が一役買っているのかもしれない。
 また、太平洋のクロマグロにも資源量変動に周期性があるのであろうか等、夢想しているところである。