中西部太平洋(ほぼ西経150度以西の太平洋)におけるメバチの実質的な漁獲規制が2009年から導入される事になった。当海域のメバチの漁獲を30%減らすべきであるという規制案はWCPFC(中西部太平洋まぐろ委員会)の科学委員会が何度も勧告してきたのであるが、加盟国の意見が折り合わずにこれまで採択されなかった。今回合意された規制は一口で言うと2009年から3年かけてメバチ漁獲量を30%減らすというものである。まぐろ類の規制は、まず先進国が率先して漁獲規制に乗り出すべきであるというのが私の主張であるが、今回の規制は、基本的にはその線に沿ったものとなっており、評価している。しかし、このメバチ規制はいくつかの早急に解決すべき問題を抱えたままである。
まず、(1)WCPFC海域と隣接する東部太平洋では、メバチの漁獲規制が無い事である。東部太平洋におけるまき網船によるメバチの未成魚の漁獲量は、西部太平洋でのまき網の漁獲量の数倍に達する。メバチは西経150度をまたいで回遊しているわけで、今回のWCPFCの規制は限定的な意味しか持たない。
さらに、(2)WCPFCでは政治的な絡みで、条約海域の西端が何処であるか規定していない。生物学的には、少なくとも、アジア大陸の東端、すなわち中国、ベトナム、タイ、マレーシア及びインドネシアの太平洋側を含むと考えるのが妥当である。ところが、かつて日本がメバチを漁獲していた南シナ海などは、いまのところ全くまぐろ類の漁獲統計が存在しない。科学委員会による断片的情報では、ベトナムが延縄でまぐろ類を3万トンほど漁獲しているとの報告があり、その中にはメバチが少なからず含まれている可能性が高い。つまり、WCPFC海域の両側でメバチの漁獲がなんら規制されていないわけである。
(3)もう一つの問題は、キハダも漁獲死亡を現在以上に増加させないという勧告がされているのに、キハダの方は、あまり意識されていないように思われる。キハダに関して言えば、まき網の漁獲量は、未成魚はもちろん成魚でも延縄の漁獲量より格段に大きく、科学委員会でも、延縄の影響の方が巻き網より大きいメバチの場合と異なり、まき網の方がキハダ資源に与える影響が大きい事が指摘されている。キハダは、まき網にとって、メバチと違って、狙って獲っている漁獲物であり、キハダの規制の遵守も重要である。
2009年は、メバチ・キハダの規制措置がどのように実効をあげるのであろうか、まさにWCPFCの存在が試される年であると言えよう。
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