OPRT社団法人責任あるまぐろ漁業推進機構

第1回 ミナミマグロの漁獲量削減に想う

 ミナミマグロの漁獲量が来年から3000トンばかり減らされることが先日決定された。これで実に20年間にわたり約1万5千トンに維持されてきた漁獲量が変更されることになる。ただし、この間に資源評価がうまくできていたわけではけっしてなく、逆に科学委員会で統一した資源評価に関する見解が出せないという大変な混乱を繰り返していたのである。この間、日本と豪州との資源評価をめぐる大きな差異がエスカレートし、国際裁判までしたことを覚えている人もいることと思う。
 暫定措置をめぐる裁判では、日本の調査漁獲の緊急差し止めをもとめた豪州の主張が支持されたが、本裁判では日本の勝訴となった。しかし、論争の焦点であった資源が将来急速に回復するとしている日本と絶滅に向かって急激に減少をするという豪州と、将来予測は、仲裁役のために裁判後新たに手助けに採用された独立研究者チームをいれた統一の評価ではいずれも誤りであったようである。つまり、資源は引き続き低い水準で推移し、現行の漁獲を削減しなければ、さらに資源は減少するであろうというものであり、今回の漁獲量削減となったわけである。
 ミナミマグロはこれまで、漁獲統計や年齢、成熟などの生物情報がしっかりしていることから、他のまぐろ類資源の資源評価のお手本のように言われてきた。ところが、主要漁獲国である日本と豪州との漁獲量がどうも割当量より過剰であったこと、また、ミナミマグロの寿命や成熟年齢がこれまでより高いらしいことなどが判明し、お手本の座からおろされそうな状態になってきた。ミナミマグロにしてもそうであるが、たいていの水産資源の資源評価には、他の魚種との競合関係とか、海洋条件の変動とかが資源に与える影響はまったく考慮されていないといって過言ではない。いわゆる生態系の中からミナミマグロと漁業だけを切り出してきての評価であるから、最近ミナミマグロがやせてきたとか、餌のなかのオキアミが見られなくなってきたとか漁業以外の要因が資源の変動に影響を与えている可能性があるが、このような要因が具体的に資源にどう影響しているか不明であるから、資源評価に取り入れることが出来ないでいるそれは将来の研究を待つしかない。 (これまでの長年のマグロ資源研究を振り返って、マグロについていろいろと語ってみたい。気楽に読んでいただければ幸い。)